アンジェイ・ズラウスキー『狂気の愛』

出て来る人間最初から最後までみんな躁で、跳ねて怒鳴って踊ってやたら顔を近づけて喋るから隙あらば誰とでもキスしてベロベロ嘗めて、よくあの天気悪い陰気な土地でテンション上げ続けていられるなあと思うし面白いんだけど終止その状態なわけで終盤になるとそろそろ終わらないかなあと思ってしまう。ズラウスキーはこれと『ポゼッション』しか見たこと無いのだが、音楽(と効果音)が異様に古くさくてダサいのと女の人が狂った様に狂うシーンがあるのと、最後は銃撃戦で全員死ぬっていうのが共通していてタランティーノみたいなエンタメかもしれない。それにしても狂気はともかく「愛」が何なのか分からなかった、とか、真面目な感想を抱いてしまいますがそういうことでは無いのだろう。


で、比べる必要もないのだが、先日見たファスビンダーの『13回の新月のある年に』の方が好みで中々記憶に残るシーンとかありそうで、ガタイの良い、性転換したもののごつくて綺麗ではない気弱で優しい主人公が「ごめんなさい、私馬鹿だから…自分のことで頭がいっぱいになってしまって」的な、もしかしたら結構違う台詞かもしれないがそういう意味に聞こえることを言っていたのがなんだかじーんと来て、出てくる人もみんな意外と優しいのに主人公救われないところも良かった。がしかし、こう「弱く不条理な人間をえがく」的なものばっかり好きで、なんか恥ずかしい…というのも違うけど、もっと違う観点で映像やお話を好きになっても良いのにとは思う。